イランで仮想通貨を使ったキャピタルフライトが発生、経済制裁を警戒か
米トランプ大統領は今週、イラン核合意から離脱することを発表した。これを受け将来的な経済制裁を警戒した市民は、イラン国内から資産を国外に逃がすキャピタルフライトに動いている。キャピタルフライトの一部は、ビットコインなどの仮想通貨も使われている。
イラン経済委員会のMohammad Reza Pourebrahimi委員長は、この数ヶ月間で3.2兆円相当の資金が国外に流出したことを明かした。その内、2700億円が仮想通貨を使って行われたようだ。
アメリカは2016年にイラン核合意を締結し、2011年から続いていた経済制裁を解除していた。経済制裁を受けていた当時のイランでは、石油の生産が半減し経済に大きな打撃となっていた。アメリカとの関係が悪化したことで、今年に入りイランの通貨リアルはドルに対して下落しており、自国通貨の価格の下落がキャピタルフライトを加速させた。
イラン政府高官のAzari-Jahromi氏は今年2月、ブロックチェーンを使ったデジタル通貨の開発を行っていることを明かしている。
国が主導し発行される仮想通貨は、アメリカの経済制裁を回避することができるのではと注目されている。仮想通貨の取引はブロックチェーン上で行われるため、金融機関の取引を監視しているアメリカの包囲網から抜け出すことができる可能性がある。
アメリカからの経済制裁を受けているベネズエラは、自国の原油にペッグした仮想通貨ペトロを発行している。同様の状況下にあるイラン政府もペトロには注目していることだろう。
イラン市民は、ビットコインの売買マッチングサイトのLocalBitcoinsなどを使って現金をビットコインに交換している。日本円換算で1BTC=150万円ほどで取引されており、現在の取引所価格が1BTC=100万円ほどであることから、50万円のプレミアムが付いていることになる。
イランの中央銀行は先月、ビットコインや他の仮想通貨を使ったキャピタルフライトを防ぐため、金融機関に仮想通貨取引所との取引を停止するよう命じた。
ビットコインなどの仮想通貨は、経済が安定している先進国ではボラティリティが高い投機の対象としての需要が高い。一方、経済が安定しない国の市民にとって仮想通貨は、価値の貯蔵手段であったり国際送金の手段といった機能に需要があるようだ。
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