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国内初、数億円ICOベンチャーが奮闘するICOの税務と決算

仮想通貨バブルを象徴するキーワードとして、ビットコインと並んで話題にのぼる、仮想通貨による資金調達ICOInitial Coin Offering)。

国内でもICOにチャレンジしようという人たちが増えるなかで、多くの人が気にかけていない大事なことがある。真っ当に資金調達した企業や個人が、必ずしなければならない義務である「税金の支払い」、つまり会計処理だ。

2017年にICOで資金調達をした国内の成功例として知られるソーシャルメディアプラットフォームのスタートアップALISはいま、ほぼ日本初になるICOの税務処理を行おうとしている。

良くも悪くも目立つ、ALISの動きに集まる視線

「日本で初めて数億規模のICOを実施したことで、ALISは良くも悪くも目立つ存在だと自覚してます。(最初の一歩を踏み出した)“ファーストペンギン”になった以上、自分たちなりのICOのあり方を発信していく必要があるだろうと考えたんです。今後、仮想通貨やICOが伸びていく可能性が大いにある中で、僕たちが積極的に情報開示をしないと、誰も知識が得られないですよね」 

ALIS代表の安昌浩氏は、いまの心境をそう説明した。

ICOで資金調達した企業の税務処理は、まだ誰も手がけたことがない未開の分野だ。それだけに相談したくても窓口がなかったり、そもそも仮想通貨というものに会計事務所が詳しくないケースも多い。

ほぼ日本初の「ICO実施企業の会計処理」は、税の専門家でもないスタートアップ1社でやりきることは不可能に近い。そこでALISは、税務サポートをする仲間を引き入れた。それが、沼澤健人代表(31)が立ち上げたアトラスアカウンティング(Atlas Accounting)だ。

沼澤氏は、税務・監査のプロフェッショナル集団KPMGグループのあずさ監査法人出身。個人のTwitterアカウント(@2nd_chick)でも仮想通貨の税務相談に返信するなど、界隈では「仮想通貨の税務に詳しい人物」として知られている。別の会社の起業を経て、2016年4月にアトラスアカウンティングを起業した。

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沼澤氏が運営するツイッターアカウント「二匹目のヒヨコ@仮想通貨税務駆け込み寺」

アトラスアカウンティングでは、財務会計分野の専門性を持つだけでなく、起業やITシステムなどにも精通した公認会計士や税理士を集め、ブロックチェーン企業のサポートやICOプロジェクトの開示サポートを提供している。

それにしても、いくら会計業務に詳しいとはいえ、なぜICOの会計をサポートすることにしたのか? 安氏と沼澤氏が出会ったのは2017年の10月ごろのこと。沼澤氏は言う。

「私自身が仮想通貨交換業者のサポートをした経験があったことが前提としてあります。そのうえで、安さんの話を聞いて、企業会計基準委員会(ASBJ)の動向を(自身が)キャッチアップしていたこともあり、ルールの定まっていない中でALISチームが自ら範を示して、ルールづくりに積極的に影響を与えていきたいという姿勢に共感したからです。“一緒にチャレンジしましょう”という話にすぐにまとまりました」

ICOには詐欺的なプロジェクトも少なくない。ALISチームであれば、真に価値のある後続のプロジェクトにとって良い環境づくりをできるのではないかという期待感があった、と語る。

ICOの会計処理が難しいと言われるのには、いくつか理由がある。

もっとも大きい理由は、上場のためにはパスしなければいけない基準が明確に決められているIPO(Initial Public Offering=新規株式公開)と違い、ICOを実施する際のルールは監督官庁金融庁国税庁)によってまだ明確化されていないことだ。そのため、尻込みする会計事務所が少なくないという。

沼澤氏によると、ルールが定まっていないのは、ICOを実施した際の「財務会計基準」や「法人税制」についても同様だという。

個人が仮想通貨の取引などで得た利益に対する所得税については、国税庁が2017年12月にガイドラインを示したことで、業界として一定の方針は広がった。一方で、(法人が仮想通貨で資金調達する)ICOについては、明確な方針が打ち出されていないのが、5月4日時点での現状だ。

ICOの会計処理の論点は大きく2つ

関係者によると、ICOの会計処理の論点は、以下の2点に大別できるという。

1,ICO実施に際して調達した仮想通貨(BTC=ビットコインやETH=イーサリアムなど)の会計処理


2,ICOプロジェクトにおいて発行された(mintした)仮想通貨(この場合はALISなど)の取り扱い

前者は、期末の時価評価に関する指針は示されているなかで、ICO実施時に調達した仮想通貨が「売上高」を構成するか否かがポイントになる。この場合、「開発資金」として調達した仮想通貨に多額の税金がかかってしまうことが課題だ(同時に、売上を構成しない、前受金などの「負債勘定」として計上するための要件なども検討されるべきだ、という意見もある)。

後者の「ICOプロジェクトで発行された仮想通貨」については、会社または創業者らが一部を自己保有するケースも多い。その仮想通貨についても、(法人の場合)期末の時価評価を行うかどうかが論点になってくる。

国内でも珍しいICOの税務処理方針は「企業ビジョン最優先」で決めた

会計処理のアドバイスを引き受けるにあたって注意したことは何だったのか?沼澤氏に聞いてみた。意外なことに、安氏に対して「こういう資金の使い方はしないでほしい」といったような要求は、ほとんど何もしなかったという。

「私の考えでは、会社というのは、あくまで経済活動が優先なんです。それを映す鏡が会計であって、そして表裏一体の税法体系があります。まずは安さんのICOに対するビジョンがあって、それを実現する上でリスクがあればアドバイスする、ALISが正しく税金を納めるためのサポートをする……というのが税理士をはじめとする専門家(アトラスアカウンティング)の立場です」

一方で、公の指針がない状態は当初から継続している。そのため、税務申告にあたっては、金融庁国税庁の「事前確認制度」を使って、節目節目の確認を徹底。また、沼澤氏の個人的なコネクションをフル活用して、金融庁国税庁などの政府の考え方の動向も追うことで、監督官庁の方向性に沿うように備えている。

税務処理以外にもある「課題」、情報開示をどうすべきか? 

ICOはれっきとした「支援者がいる資金調達手法」だ。だから、調達した資金の使途や現在のALISという企業の健全性をどのように、どこまで開示していくかも重要な判断になる。

安氏が沼澤氏に提示したALISの開示方針はきわめてシンプルで「できる限りの情報を開示すること」だった。

ただし、沼澤氏は「この方針を実際の運用に落とし込むのは、実務とのバランスという点で、簡単な作業ではない」と語る。

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主には2つの検討要因がある。

1つめは開示範囲だ。開示ルールが定められているIPOを参考にしようにも、ICO実施企業とIPO実施企業とでは、企業としてのフェーズがそもそも異なる。IPO実施企業と同じ手法や頻度で公開するには、ビジネスをこれから立ち上げていこうというスタートアップにとってはコストが重い。また非公開企業ならではの「成長性とスピード感を重視した自由な運営」に網をかけることにもなりかねない。

2つめは、どのように開示するのか。ALISの出資者(ALISトークンホルダー)には、必ずしも投資のプロでない人たちも多く含まれる。IPOのように財務諸表などを開示して終わりというわけにはいかない、と安氏は考えている。

「例えば、インフォグラフィックにまとめるなど、情報をわかりやすく噛み砕いて伝える努力もしないといけないと思ってます」

そのため、情報開示の内容や方法については現在も目下、模索中。いずれにしろ、ICOならではの開示手法を取り入れ、オープンにしていくとのことだ。

業界の健全化のため、「透明性の高いICO」目指す 

いま、ALISは5月末の申告完了に向けて、最後の詰めの真っ最中だ。

先に書いたように、「先行事例がなくALISが道を作っている」状態のため、「こうなっていれば100%正しい」というものが見えづらい状況に変わりはない。

また、5月末までに当局からなんらかの公式アナウンスがあり、その内容がALISが採用したやり方と異なっていれば、当然、それに対応しなくてはいけない。

沼澤氏は様々なケースを想定して、間違いがわかったら即座に修正申告する準備も進めている。

ALISとしての「初年度決算」の情報開示については、5月末の提出が終わったあとの6月中を目指している。

開示の内容や方法を模索中ということは先に書いたとおり。ベンチャー企業には重荷になりかねない手間をかけてまで開示する背景には、国内のICO先駆者としての強い思いと覚悟がある。

「今、仮想通貨に関して、明るいニュースが少ないですよね。ICOについても、“詐欺が多い”とか“怪しい”というイメージがついて回っているのも認識しています。でも、我々はブロックチェーン技術やICOで世界を変えようと真面目に取り組んでいます。

ICOをする上で、情報を開示する義務はありませんが、我々が適切に開示をする実例を作っていくことで、業界の健全化につなげたい、と考えています」

 

参考URL:

https://www.businessinsider.jp/post-166831